定義は「昨年はじめて読んだ本」。新刊、旧刊は問わないものとする。順不同、優劣はなし。ちなみに昨年はライトノベル縛りを自分に課したところなので、ライトノベルが多くなっている。
選ぶのに苦労した。読書生活が1年ですっぱりと区切れるわけではないので、どれが昨年読んだものだったのか意外と覚えていないものだ。
M川が以前、「ベストを選ぶときは、読んだ本を全部書いてからにしてほしい」と言っていたが、読書手帳をまめにつけてないかぎり無理だなあと思った。
基準としては、「おもしろかった」よりも「その本のことをよく考えた」「影響を受けた」を重視した。
毎年思うのだが、私は本当に新刊を読んでいない。時代に背を向けているようでイヤなので、新刊を読むことを来年の目標としたい。
(時代に背を向けていたら『涼宮ハルヒ』は読まないと思うが)

1)『NHKにようこそ !』
滝本 竜彦 (著)
角川文庫
1)について。
非常に太宰治らしい太宰治。自虐私小説部分もよいけど、フィクションらしいフィクションであり、救いのある「お話」である岬ちゃんのエピソードをきちんと書けるところが才能だと思う。しかしその辺の「自虐リアリズム」と「救いのあるフィクション」のミックス具合がなんとも太宰治的だ。

2)『虚構世界の存在論』
三浦 俊彦 (著)
勁草書房
2)について。
マリー=ロール・ライアン『可能世界・人工知能・物語理論』でもいいけど、まだ読み終わってないのでこちらを選んだ。この本がおもしろいというより、今年の後半は虚構理論について考えることが多かったので、その文脈で1冊あげる。この本自体についていえば、三章の結論部以外はいい本だ。ただし、かなりの奇書である。手法(論理学)と対象(文学)の結合の仕方も奇妙なら、出てくる結論もいろんな意味で奇妙だ。『ドグラマグラ』を越える一冊と言えるかもしれない。

3)『銀河パトロール隊 - レンズマン・シリーズ 1』
E.E. スミス (著), E.E. “Doc”Smith (原著), 小隅 黎 (翻訳)
創元 SF 文庫
3)について。
表面的な欠陥はいっぱいある。大体「マッチョなヒーローが悪い宇宙人を倒す話」だという時点で真面目に読んでられない人も多いだろう。しかし「とにかくおもしろい」という一点でレンズマンシリーズにかなう作品はほとんどないだろうと思う。「とにかくおもしろい」「先が気になって仕方がない」というのは暴力的なほどに有無を言わさない力で、とても確かなものなので好きだ。
4)『鋼鉄都市』
アイザック・アシモフ (著), 福島 正実 (翻訳)
ハヤカワ SF 文庫
4)について。
『ファウンデーションの彼方へ』をあげたいところだが、あれは1冊だけ読んでも仕方のないものなので、1冊としての完成度が高いこちらを選んだ。SF ミステリの傑作だが、何よりもまず「ダニール萌え~」と言いたい。ロボットの人らしさを描きながら、最初に設定したロボット三原則だけは絶対に歪めないところがアシモフの天才だと思う。
5)『新ナポレオン奇譚 - チェスタトン著作集 10』
G.K.チェスタトン (著), 高橋 康也 (翻訳), 成田 久美子 (翻訳)
春秋社
5)ついて。
本当なら「ナショナリズムを考える5冊」などに毎回あがってもいい名作だと思う。あらすじは、ノッティングヒルを含むロンドンの各市街が市街愛にめざめ、市街のために剣をとって戦うという話。東京で言えば、経堂や東松原や笹塚の人々が、「経堂愛」、「東松原愛」、「笹塚愛」等々に目覚め、市街のために剣をとるという話だ。原題の『ノッティングヒルのナポレオン』は、東京で翻訳すれば、『自由が丘の織田信長』『駒場東大前の始皇帝』のようなニュアンスか。要するに目茶苦茶なタイトルの目茶苦茶な小説だ。

6)『新本格魔法少女りすか』
西尾 維新 (著)
講談社ノベルス
6)について。
西尾維新は「ジャンプ漫画のおもしろさをそのまま小説に書ける」ことを証明した。個人的には、それだけで文学史にのこしてよい偉業だと思う。

7)『涼宮ハルヒの憂鬱』
谷川 流 (著), いとう のいぢ (イラスト)
角川スニーカー文庫
7)について。
「最近のライトベルってこういう感じなんだー」「メタで世界(セカイ)な感じなんだー」という衝撃を感じた1冊。この作品自体について言えば、著者はふつうにとても頭のよい人なんだろうなあと思った。

8)『星界の紋章〈1〉帝国の王女』
森岡 浩之 (著)
ハヤカワ JA 文庫
8)について。
『星界の紋章』はふつうにとてもおもしろい物語で、そこが正当に評価されているので、あまり言うことはない。昔『ホビットの冒険』を読んだときに感じたような、「おもしろいなあ。この世界のことをもっともっと知りたいなあ」といった種類の感情を喚起する。「ほにゃらら家のほにゃらら侯爵」みたいなベルばら的世界観さえ乗り越えれば、たいていの人は楽しめると思う。

9)『ディアスポラ』
グレッグ・イーガン (著), 山岸 真 (翻訳)
ハヤカワ SF 文庫
9)について。
SF の王道。科学に関する描写がとてもむずかしいという点さえ乗り越えれば。
10)『微笑みの伝道師 - 倉戸と蜂須の奇怪探偵通信』
アーカイブ騎士団
http://www.at-akada.org/archive/
「その1冊のことをよく考えた」という定義でいくと、一番考えたのは自分で書いたものに決まってるわけで。
自画自賛をしたいわけでもないのだが、この1冊をのぞくと昨年を振り返っている気がしないのであげておく。
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