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[]偶然に対する信仰

昔から「偶然を信仰する」という立場がありえるのではないかと思っていた。自分はそのような態度をとりたいとも思っていた。しかし肝心の「偶然を信仰する」ということの意味内容が自分自身にもよくわからなかった。そのため、ちっともうまくそのことを説明できず、あまり人には言わないようにしていた。

しかし今日突然その意味が多少整理できたので書き留めてみる。


まず、テツガク的には偶然とは「実際起こったが、起こらないこともありえた(必然的でない)」というのと「実際には起こらなかったが、起こることもありえた(不可能ではない)」の両方を意味するらしい。ただし日常的には、偶然といえばまず前者の「実際起こったが起こらないこともありえた」という方だ。私も前者の偶然について考えている。

よくある考え方では「ある出来事が起こったのが偶然ではない(必然である)」ことに意義を見いだす。例えば、「あの人と出会ったのは、とても偶然とは思えない(運命である)」「私の誕生日がナポレオンと同じなのは、とても偶然とは思えない(運命である)」などなど。

しかし、これとはちがった態度があってもいいのではないかと私は思う。ちがった態度というのは、「このことは偶然であるにもかかわらず、実際起こった。だから、そこに何らかの意義を見てもよかろう」という態度のこと。言い換えれば「この出来事は起こらなくてもよかったのに起こった。ならばここはひとつ、この出来事にこだわってみよう」という態度のこと。

偶然の出来事にこだわるという、この態度自体は別におかしくも何ともない。もちろん偶然の出来事にこだわる必要は(偶然だから)ないのだが、別にこだわってもおかしくはない。そして私は実際こういう考え方をすることがよくある(例: 偶然私はシャーロック・ホームズと誕生日が同じであるから、シャーロック・ホームズを読まねばなるまい)。

この考え方はそこまで珍しいものではない。例えば、日本語の「これも何かの縁でしょうから」という紋切り型はこの発想によく似ている。「縁」という語は「運命」に近いようだけど、そこまで強い概念ではなく、むしろ「これは偶然だけど、ともかくも実際起こったのだから...」というニュアンスを持つ。あと今気づいたが、この「実際起こったのだから」「折角だから」という発想は "Mottainai" にも似ている気がした。しかしその点は置いておこう。


次。「偶然起こった出来事にこだわってみる」という態度を信仰と呼ぶ理由について。これも信仰と呼ぶ必要はないのだが、「偶然だが実現してしまったこと」は、私自身にはどうしようもない事柄である。つまり、偶然事はつねに向こうからやってくる異なものなのであるからして、「神」や「奇跡」に似ていなくもない。従って偶然事にこだわることを信仰と呼んでみてもよいのではないか。

要するに、呼ばなくてもいいが、似ているから同じ言葉を使ってみようという程度の理由。


以上。偶然を信仰するとは要するに以上のような態度のことだった。今後これを洗練させ、偶然神学および偶然教を確立、やがては初代教祖の座につき、お金をがっぽり儲けたい。



つづき:

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コメント (2)

煩:

偶然神シンパの私としては見逃せないエントリですが取り敢えず偶然教のゴスペルはインプロ縛りと予想します。賛美歌は即興詩。

atakada:

あるいはケージのチャンス・オペレーション。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%B6%E7%84%B6%E6%80%A7%E3%81%AE%E9%9F%B3%E6%A5%BD


賛美歌の作詩には、トリスタン・ツァラの「ダダの詩をつくるために」メソッドを参考としたい。聖書もこの方法で書く。
http://www.logico-philosophicus.net/hedonism/hedonism2003b.htm
「新聞を用意しろ/ハサミを用意しろ/つくろうとする詩の長さの記事を選べ/記事を切り抜け/記事に使われた語を注意深く切りとって袋に入れろ/袋をそっと揺り動かせ/切り抜きをひとつずつとりだせ/袋から出てきた順に一語ずつ丹念に写しとれ/きみにふさわしい詩ができあがる」

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2007年1月26日 14:42に投稿されたエントリ

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