名古屋大学出版会
私が『論理学をつくる』で論理学の勉強をする。
ギリシア文字について。本書では、図式記号などにギリシア文字を使っている。本ブログではこの方針に従ったり従わなかったりしてきたが、そろそろギリシア文字の分量も増えてきたので方針を決めることにしたい。
- メタ記号に対象言語と同じ種類の文字を使いたくない、という方針は理解できる。
- しかしギリシア文字なんか Web で使いたくない(論理記号を使っている時点でどうかという話はあるが)。
よって以後本ブログでは戸田山の記述を以下のように置き換えるものとする。
- ギリシア小文字については、日本語のカタカナを使う。しかも、小文字であることを示すためになるべく「ャ、ュ、ョ」など小さい文字をあてることにしたい。
- ギリシア大文字については、日本語の漢字を使う。「甲乙丙」など。
5章は一気に終わった。むしろ6章の述語論理のセマンティクスがむずかしい。
第5章 論理学の対象言語を拡張する
■ 5.1 なぜ言語の拡張が必要なのか
- 述語論理(predicate logic)
- 命題の内部構造を問題にする論理だよ。
- 命題論理(propositional logic)
- これまで学んできたような、単純命題の内部構造を問わない論理だよ。
■ 5.2 述語論理での命題の記号化
- 5.2.1 命題の内部構造とは?
- 5.2.2 個体指示表現を主語とする文の記号化
- 5.2.3 普通名詞が主語になっている命題の記号化
- 5.2.4 もう1つの量化子
- 5.2.5 翻訳練習をたっぷりやっとこう
命題のことを、「●は■である」という構造をもったものだということにするよ。
●は主語(subject)、■は述語(predicate)と呼ばれることがあるね。
主語になることができる表現には個体指示表現(singular term)、一般名辞(general term)などがあるね。
個体指示表現にはいろんなものがあるけど、代表的なのは次の3種だよ。
- (1)固有名(proper name): 「吉田戦車」など。
- (2)確定記述句(definite description): 「日本で一番長い川」など。
- (3)指示詞(demonstrative): 「これ」など。
(2)と(3)はむずかしいから、ここでは扱わないよ。
命題は次のように記号化するよ。
[Interpretation]
D: は映画監督である s: スティーブン・スピルバーグ Ds: スティーブン・スピルバーグは映画監督である
- 個体定項(individual constant)
- 命題のうち、個体指示表現を記号化したものだよ。小文字のアルファベットをあてるよ。
- 述語記号
- 命題の述部を示す記号だよ。大文字のアルファベットをあてるよ。
述部は個体定項を入れないと完成しないよ。未完成であることを示すために、とりあえず一般化した記号を入れて、Dx などと記号化することにするよ。
Dx は x に個体定項を入れると命題を返す関数だよ。
- 命題関数(propositional function)
- 個体の集合から命題の集合への関数のことだよ。述語は命題関数だよ。
- 全称記号/全称量化子(限量子)/普遍量化子/universal quantifier
- ∀のことだよ。すべての x について Dx ということを「∀xDx」と書くよ。すべての x について Dx→Mx は「∀x(Dx→Mx)」だよ。
- 存在記号/存在量化子/existential quantifier)
- ∃のことだよ。「Dx であるような x がある」ということを「∃xDx」と書くよ。
- ド・モルガンの法則
- (同値は「==」で表すことにした)
- ∀x¬Px == ¬∃xPx
- ¬∀Px == ∃x¬Px
つまり、「すべての x について Px でない」==「Px である x は存在しない」。「すべての x について Px であるわけではない」==「Px でない x が存在する」。
これを使えば、∃で∀を表現することも、∀を∃で表現することもできるよ。
翻訳の際の注意。
「●だけが△する」は「△するのはすべて●」として記号化する。
■ 5.3 述語論理のための言語をつくる
- 5.3.1 言語 MPL の定義
- 5.3.2 量化子の作用域と変項の自由な現れ・束縛された現れ
述語論理を展開するための人工言語を定義しよう。この言語を MPL(Monadic Predicate Logic)と呼ぶよ。
【MPLの語彙】
- (1)項(term)
- 個体定項: a, b, c, ...
- 個体変項: x, y, z, ...
- (2)述語記号
- P, Q, R, S, ...
- (3)論理定項
- 結合子: →、∧、∨、¬
- 量化子: ∀、∃
- (4)補助記号
- (, )
【MPLの文法】
(1)1つの述語記号の後ろに1つの項をおいたものは論理式だよ。これを原子式と呼ぶよ。 (2)A, B を論理式とすると、(A∧B)、(A∨B)、(A→B)、(¬A)はおのおの論理式だよ。 (3)A を論理式、「ャ」を個体変項とすると、∀ャA, ∃ャA はおのおの論理式だよ。 (4)(1)(2)(3)によって論理式とされるもののみが論理式だよ。
これは帰納的定義だよ。帰納的証明が使えるよ。
図式文字について。
本書では個体変項を表す図式文字にギリシア小文字を使っている。
(1)x、y、z などの個体変項を表すために、クシー、ゼータなど。これについて、本ブログでは、「ャ、ュ、ョ」など日本語のカタカナ小文字をあてる。
(2)a,b などの個体定項を表すために、アルファ、ベータなど。これについて、本ブログでは「ァ、ィ、ゥ」など日本語のカタカナ小文字の最初の方をあてる。
(3)項(個体変項 + 個体定項)を表すために、タウ。これについて、本ブログでは「ヵ」をあてる。
上記の文法は下のような不自然な論理式を許容してしまう。
(a)∀xPy など量化子の個体変項と述語記号の後ろの個体変項がずれているもの。
(b)∃yQa など量化子がついているが述語記号の後ろに個体変項がないもの("a" は定項)。
(c)∃x∀xPx のように余分な量化子がついているもの。
これらに対しては、認めてしまう「おおらか路線」と、認めないように定義を縛る「神経質路線」の2つがありうる。本書ではおおらか路線を採用し、これらの論理式を認めることにする。
現れ/作用域などの定義
- (1)個体変項ャの現れ(occurrence)
- ∃ャPャ∧Qャ や ∃ャ(Pャ∧Qャ) のように同じ個体変項が何カ所にも現れることがある。このそれぞれの出現箇所を、個体変項ャの現れというよ。ただし量化子直後のもの(∃ャの「ャ」など)はのぞくよ。
- (2)量化子の作用域(scope)
- 形成の木において、その量化子が結合する相手になった部分論理式のことだよ。∀xDx→Mx において、∀の作用域は Dx。∀x(Dx→Mx)において∀の作用域は(Dx→Mx)だよ。
- (3)ャを束縛する量化子
- ∀ャや∃ャのように量化子の直後にある個体変項がャであるとき、その量化子はャを束縛する量化子であるという。例えば∃x の∃は x を束縛する量化子。
- (4)個体変項の自由な現れ(free occurence)
- 個体変項ャの表れが自由である ⇔ その表れがャを束縛する量化子のなかにない。
- 現れが自由でないとき、束縛されている(bound)と言う。
- (5)閉じた式と開いた式
- 閉じた式(closed formula)とは、個体変項のいかなる自由な現れも含まない論理式のことだよ。そうでない論理式を開いた式(open formula)というよ。人によっては閉じた式を文と呼ぶけれど、本書ではその言い方は採用しないよ。
- (6)量化子の空虚な現れ(vacuous occurrence)
- 量化子の現れ∀ャまたは∃ャが空虚である ⇔ その量化子の作用域に変項ャが自由に現れない。
■ 5.4 タブローの方法を拡張する
- 5.4.1 具体例からヒントを得る
- 5.4.2 展開規則とその使い方
述語論理についてもタブローを使えるようにするよ。
量化子の展開規則。
量化子の作用域に、個体定項をガンガン代入してやったらいいんだよ。
∃について。
∃の展開規則を、存在例化(EI: existential instantiation)というよ。
- EI
- ∃ャA
- ↓
- A[ァ/ャ]
- (ただし、ァはその経路にこれまで現れていない個体定項)
- (A[ァ/ャ]は、論理式 A に含まれる個体変項「ャ」の自由な現れに一斉に個体定項「ァ」を代入した結果得られる式のことだよ)
∀について。
∀の展開規則を、普遍例化(UI: universal instantiation)というよ。
- UI
- ∀ャA
- ↓
- A[ァ/ャ]
- (ただし、ァは任意の個体定項とする)
- [UI]は同じ式に何度も繰り返し適用される。つまり、新しい個体定項が現れるたびにその定項を代入したものを書き足さねばならないよ。
- 【攻略法】
- [EI] はなるべく [UI] の前に適用すること。そうすれば何度も個体定項を代入する手間も省ける。
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