ライアン本1章

可能世界・人工知能・物語理論

マリー=ロール・ライアン(著), Marie‐Laure Ryan(原著), 岩松正洋(訳)

水声社、2006

  • 1 虚構の中心移動

読み直し。様相論の基礎を勉強してから読み直すとやはりまったく印象がちがう。

とりあえず1章。

これホントは「可能世界」概念なくてもいいんじゃないだろうか。著者は「テクスト宇宙がたくさんの可能世界からなる」と言うが、それって要するに「テクスト宇宙」と「可能世界」という2つの概念が互いに独立したものだというだけの話だろう。もともと関係ない話がいろいろ混ざっているために、余計にややこしいことになっているように見える。

著者のあげる方針は、まとめると「可能世界概念はわりと役立つ」けど「可能世界を虚構性の分析【には】使わない」ということだろう。その辺がわからないと激しく混乱すると思われる。というか私が混乱していた。

1章でかかげられた方針は解きほぐすと以下のようになるはず。

  • 認識・様相について。
    • 可能世界は従来通り、様相(必然/可能)や認識の分析に使いましょう。
      • エーコその他がやったように、小説内における可能性の分析や認識の分析に使うならば、可能世界の概念は有益なものです。
  • 虚構性について
    • 可能世界=虚構世界ではありません。
    • しかし、「現実に actual」が指標的 [indexical] な語だというルイスの指摘は、虚構性の分析に役立ちます。
    • 虚構とは、「『現実に』の指示先が変わること」、すなわち「中心移動」です。
  • 虚構に関する言説について
    • ルイスらの言うとおり、虚構作品に関する言説の真理条件を定義するために可能世界を使ってもいいのかもしれません。

  • 「可能世界概念を、虚構作品における認識・様相の分析に使う」
  • 「虚構性を、中心移動によって定義する」
  • 「虚構作品に関する命題の真理条件を可能世界概念によって分析する」

この3つは完全に独立した話なので、混ぜるのは混乱のもと。

ただしバラバラにでてくるなら、どれもまともな方針だと思う。


訳について。

基本的には読みやすいよい訳だ。

豆知識。訳者さんの裏の顔は『文藝ガーリッシュ』。

文藝ガーリッシュ素敵な本に選ばれたくて。

千野帽子(著)

河出書房新社、2006


ただし数学用語の訳はすこしあやしい。

「秩序づけられた三重対」

p39

原文は見てないが、これは数学用語の「順序3組」だと思われる。

コメント(1)

# Aslziaec

ICqGG7

(2009/07/14 17:57)

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