- 劇団俳優座 LABO 21『地獄の神』
http://www6.ocn.ne.jp/~haiyuza/Pages/god.html
■ あらすじ
アメリカウィスコンシン州の片田舎で暮らす老夫婦が、ヘンな男を匿ったところ、その男を追うヘンなセールスマンがやってきて、謎の国家的陰謀に巻き込まれひどい目にあう。
■ 感想
経緯: zucasa 氏にチケットを譲り受けたため、新劇の公演を見に行くことになった。自分ではまず見に行く機会がなかっただろうから、よかった。
最初に悪いことを書く。
全体に漂う戦後民主主義的雰囲気 (?) というか、とにかく「社会が悪い」的世界観はかなり気に障った。具体的に言うと、パンフレットに書かれていた演出家の文章が「環境問題が悪化して地球はもう終わりだ。なぜ環境問題が悪化するかというと人々が環境より経済合理性を重視するからだ。しかしこんなことを書いている私もグローバリゼーションの恩恵を受け、おいしいコーヒーを飲んでるので云々」といった趣旨のものであり、かつそれとあいまって SE に原発批判ソングなどが流れていたことが私の心をだいぶなえさせた。
脚本自体はイヤな話だがおもしろかったと思う。上のあらすじだとどこがおもしろいのかわからないと思うが、次のような部分がおもしろかった。この劇では、最初から最後まで老夫婦が巻き込まれた陰謀がどんな陰謀だったのかは明かされない。匿われた男は何かに汚染されているらしく、「彼は保有者です」「汚染されています」と何度も言われる。あと彼がほかの人や植物に触れると、強力な静電気のような稲妻が走る。途中プルトニウムの話も出てくるが、核と関係があるわけでもなさそう。とりあえず汚染されているらしいことと、なにかの軍事作戦に利用されようとしていたことだけがわかる。
また「ロッキービュート」という地名が繰り返しほのめかされる。前半では、匿われた男が、ロッキービュートと聞くたびに、動揺して口止めしようとする。後半では、男を連れ戻しに来たセールスマンが「ロッキービュートへ行くぞ」と言う。ロッキービュートがどういう場所で、そこには何があるのかは最後までわからない。
要するに、陰謀の「陰謀っぽさ」をうろ覚えで再構成したような印象派的陰謀描写がおもしろかった。ちなみに、豆知識だが、こういうのを「マクガフィン」というのだ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%82%AC%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3
マクガフィンという言葉はアルフレッド・ヒッチコックによって考案されたとされる。
「あの棚の上の荷物は何だ」と聞く。
もう一人が答えて「マクガフィンさ」
「何だそれは」
「スコットランドでライオンを捕まえる道具さ」
「スコットランドにはライオンはいないだろ」
「じゃ、あれはマクガフィンじゃないな」
ほか、アメリカの老夫婦の「アメリカの田舎の老夫婦っぽさ」などもそれっぽいのでおもしろかった。
前半の「社会は悪」的世界観を見て、「これは世の中をよく見てないし、想像力がまずしいのではないか」と思ったが、演劇はさすがに演劇なので、陰謀のそれっぽさや老夫婦のそれっぽい台詞などは世の中をよく見てる感じだった(「あー、こういう人いるわ!」)。しかし逆からみると、この戯曲のマクガフィン的陰謀描写は、「国家というのはなんだかわからない不条理なもので、理不尽な理由でひどい目にあわせてくるものだ」という世界観にもあっているのかと思った。つまり総合すると、会話などのレベルでは世の中をよく見ているが、国家のようなレベルの物事については、「なんだかわからないが、家族などの相互行為に干渉してきてひどい目にあわせてくるもの」といいうくらいの認識しか持っておらず、おお、これは要するにミクロ - マクロ断絶演劇だと私は思った。
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