名探偵の掟

東野圭吾(著)

講談社文庫(講談社)、1999


ホームズシリーズのレストレード警部や金田一少年シリーズの明智警視など、間違えた推理を披露する刑事の人が探偵ものには不可欠なわけだが、これはその「間違える刑事役」の人を主人公にした小説。わざと間違えた推理を披露したり、陰ながら探偵を真相に導いたりと、あの役はあの役で気苦労が多いらしい。

この小説では、密室殺人やアリバイトリックや童謡殺人など、毎回推理ものの定番の事件に巻き込まれつつ、探偵と刑事が時々読者の顔になって小説の展開にケチをつける。要するに推理小説のお約束をネタにしたパロディなのだが、このジャンルにそれほど詳しいわけでもない私にとっては、種々の「型」や様式に関する蘊蓄として楽しめた。

願わくば、もっと大がかりな展開が用意されていればよかったかなと思う。最後の章では、刑事役の「私」が探偵の推理ミスに気づきつつ、それをあえて見過ごす。本編はそれであっさり終わってしまうが、それがきっかけで「私」が「小説の登場人物であること」と「ひとりの人間であること」の狭間で葛藤しはじめたりすると、わけがわからなくていいんじゃないかと思った。

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